協会について

☆ 一人の声


「母は亡くなる前の12年間に、7つの病院と施設を転々としながら、いつも何かに耐えているようだった」「せっかく長い人生を一生懸命歩んできた母が、もっと自分の老後を楽しむことはできなかったのだろうか」
私たちの活動は、この一人の呟きから始まりました。そして出会ったのが「老いるとは楽しむことであって、耐えることではない」というオーストラリアの言葉でした。
現理事長・芹澤隆子が1999年、オーストラリア連邦政府Aged Care省のブロンウィン・ビショップ大臣にインタビューしたときの言葉で、「高齢化するオーストラリアの国家戦略」の最後に寄せられた一文です。
オーストラリアには「老いることを楽しむ」ために手助けをする専門職があるということを知ったのは、その直後でした。その専門職が「ダイバージョナルセラピー」だったのです。当時は「気晴らし療法」と訳され、日本にはあまり情報が入ってきませんでした。そこで、2001年(平成13年)6月、芹澤によってオーストラリアへの「ダイバージョナルセラピー研修ツアー」が企画され、アデレードの高齢者施設で3日間の実践的な研修を受けました。
「このような専門職が日本にもあれば、もっと高齢者がその方らしい楽しみと意味のある人生を楽しめるのではないか」「日本の精神風土や生活に馴染めるようなダイバージョナルセラピーを考えようではないか」こうして、介護施設、在宅介護、医療、音楽、園芸、会社員、ジャーナリストなどなど、各分野から思いを同じくする面々が集まり、ダイバージョナルセラピーの勉強会が始まったのです。2000年に初めて募集した「DT研修」には、20人くらいの想定に200人以上の応募がありました。私たちはオーストラリアに学びつつ、まさに手探りで「老いるとは楽しむこと」を探し始めたのです。



☆ NPO法人日本ダイバージョナルセラピー協会設立へ


日本での研修活動と同時に、オーストラリアへの研修や芹澤の取材を重ね、2002年1月には、オーストラリア・クインズランド州ダイバージョナルセラピー協会に芹澤が会員登録されました。
その12月、かねてから進めてきた準備が実って、大阪府から特定非営利活動法人(NPO)として認証され、オーストラリアDT協会の“SisterAssociation”として日本ダイバージョナルセラピー協会が発足しました。12月1日に開催された「日本ダイバージョナルセラピー協会設立記念セミナー」には、オーストラリア総領事・ジョン モントゴメリー氏自ら挨拶に立ち「高齢化は“問題”(Problem)ではない。よりよい社会を作るための大きなチャンスだ。ダイバージョナルセラピーを質の高い介護の実践に結び付けてほしい」と話されました。
また、クインズランド州タウンズビルのバリアリーフTEFE(州立高等教育専門機関)の理事長、講師、タウンズビル市のミッションの一人であるスーザン・ロバーツ氏らによるダイバージョナルセラピーの講義やロールプレイングが行われ、ダイバージョナルセラピーへの興味はさらに深まっていきました。

理事長 芹澤 隆子